ブロックチェーン以前に..命に直接関わる医療の問題について考えてみた。
メディブロックCEO(コ・ウギュン 右端)とMai(藤本真衣 左端)の講演で
Contents
1.医療情報のブロックチェーン化の背景
a.病院間での医療情報の共有ができていない
現在複数の病院で診察を受けると、基本的には、検査を一からやり直します。
例えば、”検査して手術の必要がわかった。その手術で実績のある病院で手術をしたい。” という場合
紹介状を書いてもらい、手術を受けるために他の病院に行き、
そこからまた一から細かく検査を受けることになります。
不便なだけではなくて、例えば、レントゲン写真は被爆するので、無駄に回数多く撮影するのは健康に悪影響ともなりかねません。
ただし、医療情報は高度なプライバシーが要求されること等(おそらく非常に多くの理由)から、電子カルテは普及しても病院間での相互運用はされてきませんでした。
b.本人が自分の医療情報を保有できていない
深刻な病気の場合は家族に告知しても本人に告知しないということすらあります。
また検査結果について、健康診断でしたら、データを印刷した紙のデータでわたされますが、
診察を受けた場合に行われた検査結果については、患者がお願いすればもらえるというレベルのことが多いです。
また、自分にとって何より貴重な医療情報を電子データでもらえません。
c.ブロックチェーンは医療情報のセキュリティーと活用性を高める。
これらのことがなかなか改善してこなかった理由はプライバシー保護や病院の密室性があると思われます。
この分野にブロックチェーンを導入した場合これらの問題を解決し、
遅れに遅れている医療情報の合理的な有効活用(相互運用とそれを超えたAIへ提供する医療ビッグデータの生成等)への道ができます。
そのために、多くの企業や団体が現在動き始めました。
2.数年後に絶対必要となる新しい健康管理のあり方
a.絶対持続できない医療費
日本の医療費について、出典 厚生労働省 最近の医療費の動向から以下を抜粋しました。
医療費の年度別推移総計では40兆円を突破していることご覧ください。
一人当たりの医療費の平均値が75歳以下は約32万円 75歳以上は約93万円、およそ3倍であることをご覧ください。
日本ではいわゆる団塊の世代が2018年現在70歳前後に集まっています。この年代が日本で最も同年齢が多くなっています。
70歳の人が200万人くらいいます。(一年間に生まれる日本人は100万人を切りました。)
ということはあと5年もたつと、この世代の医療費が急増することになります。
日本の医療費は、税収全体の約70%もの金額に現在なっています。(健康保険は社会保険で実際は まかなわれてはいますが)
このまま医療費が税収をこえるようなことにはできないでしょう。
高齢になったからといって、日本国民全体が、潤沢に医療費を使える時代はあと数年で終わらざるを得ないことでしょう。
新しい医療の選択肢はどうなるか?
医療と言っても、診察を受けて、処方箋をもって薬局いくだけの場合は多いです。
本来自分がお金を払ってまで受けるべき診療であったのか、自分の医療情報を自分で管理して、医療費をおさえることになるかもしれません。
それは、健康保険の余裕がなくなり、自己負担分が増え節約意識が高まりそのような流れになることも予想されます。
また高齢者も、自分の健康管理をしっかりして、人生の最後に使う医療費が高くならないように努めることになる人は増えるでしょう。
それは義務としてだけでなく、その方が健康に生きられる時間が長くなるので、より幸福だと前向きに考えることです。
それを実現するためにも自分の医療情報は自分で管理して、自分で必要に応じて適切な医療機関を選べるようにするようになると思われます。
電子カルテ HIPAA PHR HIMSSとブロックチェーン
ブロックチェーンを医療に応用すれば大きな価値を産む下地は既につくられてきていました。以下その要素を説明します。
電子カルテ
普及率は高ましたが、ファイルフォーマットが業者間でが統一されているわけでもなく、病院間でのデータのやり取りまでは考えられていませんでした。
HIPAA (Health Insurance Portability and Accountability Act)
1996 年に米国で制定された医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令 医療保険の適切な申告と複数の医療機関て医療データを相互運用することを目的としている。
アマゾンのクラウドサービスではHIPAAに準拠したサービスを提供し、日本語でも説明しています。
このサービスを使うことでブロックチェーンを使わなくても、病院間での医療情報の相互運用にについてはかなりのところまで実現できるものと思われます。
またこれに準拠したクラウドサービスも既に出ているので、上にAWSの場合の例をあげました。
ただし、ブロックチェーンを使わないと、データが中央集権的であり、個人がデータを保有して自分の健康に役立てるところまではいけません。
PHR (Personal Health Record)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構のパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)利活用研究事業です。この目的はまさに皆が知るべきことです。
目的は立派なのですが、普及は今一つに思われます。また国際的なものにはなっていないようです。
目的抜粋
超高齢社会に突入した我が国においては、社会保障費の増大や生産年齢人口の減少等、様々な課題に直面しています。
課題の解決には、国民の健康を維持・増進し、健康長寿社会を実現することが有効であり、ICTの活用による地域の医療機関や介護事業者のネットワーク化とともに、個人の健康・医療・介護データをEHR(Electrical Health Record)等から本人に還元し、本人の意思に基づくデータの管理・流通・活用を可能とすることで、本人の望む様々なサービスを受けられる環境を実現することによる健康・医療・介護サービスの質の向上等が必要です。
更に、本人に還元された健康・医療・介護データ(PHR: Personal Health Record)を利用したサービスを通じて本人がメリットを実感することで、時系列のPHRが集積され、臨床研究に活用されることによる、我が国の医学の発展への寄与も期待されています。
本事業では、個人の健康・医療・介護情報を時系列的に管理できるPHR機能の実現のための技術的課題の解決等に向けて、情報連携モデル及び情報連携の在り方についての研究を推進します。
HIMSS
is a global, cause-based, not-for-profit organization focused on better health through information and technology. HIMSS leads efforts to optimize health engagements and care outcomes using information technology.
世界の医療のIT化に大きな影響力のある組織です。この組織にIT技術の医療への応用事例が集まってきています。イベントの開催も行っています。
この中にブロックチェーンフォーラムがつくられたことが、多くの医療関係者がブロックチェーンの巨大な可能性に気がつくきっかけになっているようです。
HIMSS ブロックチェーンフォーラム
3.ブロックチェーンで新たにできるようになること
ブロックチェーンはこれらのことの有用性、実現性を大きく高める。
改竄困難な形で、医療情報を保存できることから。
プライバシー保護やセキュリティーを高める観点から。
今まで困難が多かった、医療情報の相互運用性(違う組織、個人でも医療情報を相互に有効活用できる)の実現税が一気に高まったのです。
医学の進歩にインセンティブを与えること
新しい治療方法や手術方法、また効果的な新薬の開発、価値が高い新しい、
それによって多くの人の健康を増進できるような医療知識を見出した人にインセンティブ。報奨金を仮想通貨で与えることもできるようになるでしょう。
医師と言っても、仕事内容はそれぞれかなり分かれています。
医学の研究をしている医師。実際に患者に接して診察をしている医師、外科手術を多く行っている医師。
それぞれの役割に、例えば新しい、治療方法、新しい医学の知識を与えてくれた医師には、報酬としてトークンを与えるという仕組みを作ることもできます。
しかもブロックチェーンで医療情報を追跡し続けられることで、どの知識がどのくらい医療に貢献したかも数値化しやすくなります。
例えば、ワクチンの実用化の道を開いたパスツールの人類への貢献は金額に置き換えられないほど偉大なものです。
そのような貢献をした人には、その貢献度に応じてトークンを支払うという設計をすることも可能になります。
現代ではデータに基づかない恐怖感に訴えかける手法で正当な医療を否定することで報酬を得ている医師もいるように見受けられますが、
これらの医師の発言に証拠となるデータがあるかどうかもブロックチェーンにより、検証可能な形で追跡できるようになります。
それにより医学の進歩のスピードを高めることもできることでしょう!
医療データを個人が保有し、開示する相手を選ぶことができる。
予防医学と、健康のためのスポーツ、健康的な食事、これらは密接に関係しています。
ただし、現在、メディアからはあまりにも多くの健康情報があふれその真偽を判断するのが困難になっています。
それが実際に自分の健康にどう影響するのか、多くの人は、体重と血圧くらいしか測るものがありませんでした。
個人医療データを本人が保有し、開示する相手を選べるのなら、医療の現場を超えて、例えば、勉強熱心なパーソナルトレーナーにそれを開示することで
有酸素運動と筋トレをどの程度の強度と割合で行えば、健康状態を最善出来るか、ともに考えてもらえるということもできるようになります。
これは一例で、例えば栄養士に開示して、自分向けのメニューを考えてもらうこともできるでしょう。
体質は人それぞれ個性がありますが、それに応じたカスタマイズされた健康方法を探す方法が増えるということになります。
4.医療情報のブロックチェーン化を行う企業例
例としてメディブロック社を紹介します。
この会社のホワイトぺーバー(事業計画書ですが、ブロックチェーン企業ではホワイトぺーバーと呼ぶのが通例となってます。)には
1.個人の医療情報の開示相手を本人が選べること。
2.新しく役立つ医療情報をもたらした人にトークンが与えられること
等も含まれれています。この記事の3章で述べた医学の発展を後押しするエコシステムを具現化しようという志の高い取り組みをしています。
また、医療情報の開示さきについて、医療関係者、自分が許諾した相手と、細かく、合理的に規定し提案ています。
この会社のセミナーが以下のように日本でも開催されます。私がこの記事を書くために調べた中で、もっともブロックチェーンへの理解の深い医療情報を扱う企業という印象を受けています。
既に韓国で以下の実績を作ってきています。
1.ある韓国大学病院と:仮想データを用い、病院から患者に患者データを伝えたり、患者の持っている本人のデータを病院に伝えたりする。
2.韓国大学病院5か所と進めている国策課題:仮想データを用い、患者中心で病院データやライフログデータをやり取りするシナリオテスト。
3.米国大手病院と韓国大学病院と:仮想データ及び実際のデータを用い、患者中心のデータ伝達・活用シナリオテスト。
4.韓国歯科病院と:実際の診療結果(歯科検診の結果)を患者に伝える。
5. MOUを締結した漢陽大学医療院と:病院の医療情報システムとメディブロック・プラットフォームをつなぎ、患者にデータを伝達する過程においてブロックチェーンを用い、データの信頼性を与える。
その具体的な内容は以下のイベントで聴けるそうです。
5.健康とは
健康の定義としては以下が最も有名です。
世界保健機関 WHOの憲章では,「健康とはただ疾病や傷害がないだけでなく,肉体的,精神的ならびに社会的に完全に快適な状態であること」
健康とは一か0かではなく、より良い状態を目指すべきものであることがわかりやすく定義されています。
例えば、リハビリもトレーニングも、体力を増進させるという意味では共通です。それが病気や障害のある人が行えばリハビリといわれ、
スポーツをしている人が行えばトレーニングと呼ばれているだけです。
医療情報も、今までは主に病気を持っている人がそれを治癒するために使われてきました。
ところが、医療費が国が負担しきれないほど増大することからも、今後は医療情報を、自分が死ぬまで医療費がかかりすぎないために使う。
健康状態を1%でもより良いものに使う。ということになっていくことでしょう。